目次
はじめに
たかがお口のケアと軽視されているかも知れませんが、口腔ケアは全身の健康と深い関わりがあると言われています。口腔ケアがいい加減だと、特に高齢者の場合誤嚥性肺炎を起こしたり、最悪命にかかわることがあります。
高齢者の方で寝たきりの方は自力で歯科に行くことができないため、訪問歯科を利用するしか方法がありません。高齢者のお口の中の状態や訪問歯科診療内容、重要性とはどういったことなのかここでご紹介してみましょう。
口腔ケアとは
お口は食べものの入り口なので、栄養が常に豊富な場所とも言えます。さらに、唾液で常に湿っていたり、一定の温度に保たれているので細菌にとって最高の住処と言えるでしょう。
通常だと、お口の中には相当の数の微生物がいると言われていますが、これらはお口の中の環境を保つために必要な善玉菌でもあります。
ですが、お口があまり動かせなくなったり、お口のケアをいい加減にしたりすると、微生物の数が激増してしまい悪玉菌の数が増えます。この悪玉菌は抵抗力が落ちた時、重篤な病気を引き起こすことがあると言われています。
その中で高齢者に多い肺炎は常に死因の上位にランキングされている恐ろしい病気です。しかし肺炎はお口のケアを適切に行うことにより予防できると言われています。
つまり、お口のケアは高齢者にとって大変重要だということですね。
なお、お口の中は他の部位とは違い汚れていても気づきにくいものですし、構造が複雑なので簡単に歯ブラシだけできれいにすることができません。高齢者が寝たきりになると、自分ではお口のケアをできないことが多いので誰かの手を借りてケアする必要が出てきます。
そのためにも、訪問歯科診療を利用し常にお口の中をきれいな状態で保つようにしましょう。
高齢者のお口の中の状態とは
高齢になると、体にさまざまな変化が出ますが、お口の中も同様です。では、具体的にどういった問題が起きているのでしょうか?
歯周病や虫歯が多い
高齢になると、歯ぐきが下がって歯の根元が露出するため、虫歯になりやすいと言われています。
さらに、高齢者のお口の中は自浄作用が落ちているので、唾液できれいになるはずの細菌が増えてしまい、歯周病になりやすくなっています。
加齢によって免疫力が落ちることも歯周病や虫歯が増える原因です。
自浄作用の低下
お口の中には誰でも自浄作用があると言われており、唾液によって歯や舌、粘膜などに付着した汚れを洗い流し清潔に保ってくれています。
ですが、体の機能が低下し唾液の分泌量が落ちる高齢者のお口の中は自浄作用も低下しており、意識的に清潔に保たなければなりません。
入れ歯や治療跡が多い
高齢者は長く生きているうちに歯周病や虫歯になった経験が多いので、詰めものや被せものなどが多いです。さらに、歯周病の悪化によって歯をなくしてしまい、入れ歯の方も多いです。
また、詰めものや被せものをしていると、その中で虫歯が進んでしまっていることがあります。入れ歯の方は入れ歯と粘膜とのすき間で細菌が増殖しやすいとも言われています。
味覚に変化がある
人間は舌の表面に味蕾と言われるものによって味を感じていますが、高齢者の場合お口の自浄作用が落ちているので舌に汚れが付きやすく、味を感じづらくなっていたり、味覚に変化があったりします。
また、食生活が偏りがちで栄養不足になることも味覚障害の原因と言われています。
ドライマウス
高齢になると、咀嚼力が落ちたり薬の服用などによって唾液の分泌量が減ると言われています。唾液にはお口の中をきれいに保って潤す役割があるため、ドライマウスになり歯周病や虫歯が悪化しやすかったり、口臭がおきやすくなります。
訪問歯科の重要性
抵抗力や体力が落ちている高齢者や体が不自由な方にとって、お口の中で細菌が増えるのは健康にかかわる問題です。歯周病や虫歯が進行しやすいほか、細菌が肺に侵入し誤嚥性肺炎になったり、心臓病、糖尿病、血管障害を起こしたりします。
特に誤嚥性肺炎は高齢者の死因のトップにもなる恐ろしい病気だと言われています。
このような病気のリスクを防止するには定期的に歯科診療を受けることが大切です。訪問歯科診療ではそんなリスクの高い高齢者や寝たきりの方、体の不自由な方の全身の健康を保つことに役立ちます。
また、会話や食事を楽しむことは人生において最大の楽しみと言えます。会話や食事をするためにも、お口の中が健康であることが必要です。お口の中を健康に保つことで会話や食事を楽しめるので、結果的にクオリティオブライフの向上につながると言ってもいいでしょう。
訪問歯科の診療内容
歯科治療
治療用の器材を持参するため、基本的に歯科医院と同じような治療が可能で、入れ歯の作成や調整、修理、歯周病、虫歯の治療などを行います。
口腔ケア
お口の中の清掃も行います。
お口の中は複雑で細菌が繁殖しやすくなっているので、日ごろできないところを歯科衛生士や歯科医師がていねいに専門的な方法でケアし、お口の中の状態を改善し高齢者に多いと言われているインフルエンザや誤嚥性肺炎などの感染性疾患を予防します。
さらに、咀嚼や嚥下などのお口の機能を回復するための治療をします。たとえば、発音の練習や口のマッサージや体操などを行って、お口の中の機能を維持したり向上したりし、できるだけ自分の口で食べたり、会話を楽しんだり・・など、肉体的、精神的に質のいい生活が送れるようにサポートします。
まとめ
加齢と共に飲み込んだり噛んだりする力が落ちるのは当然ですが、適切なケアによってお口の中の環境をいつまでも健康に保つことが可能です。
人にお口の中を触られるのに抵抗があってお口のケアをいやがる高齢者が多いですが、そういった場合は無理強いせず、少しずつ過程を経てお口のケアに慣れてもらうことが大切です。
お口の中が衛生的に保たれ機能が向上すると、味覚も正常になり食べる楽しみが増え、肉体的だけでなく精神的な健康につながるでしょう。