目次
はじめに
歯周病や虫歯などの病気にはかかりやすい年齢というものがあります。たとえば歯周病は40歳以上に増える病気で、虫歯やお子さんや高齢者に多い病気です。
これらのお口の病気を放っておくと、歯をなくす原因になり咀嚼機能などのお口の機能を低下させます。
それに、歯の残存状態と咀嚼機能を回復することは生活の質を高められるだけでなく、全身の健康にも深く関わっていることが最近の調査で判明しています。
ただ、介護が必要な方や体が不自由な方はクリニックへ通院することができません。そういった場合に利用できるのが訪問歯科診療です。
ここではそんな訪問歯科診療を受診する際に必要なものやスペースなどを始め、訪問歯科診療について詳しくまとめてみました。
訪問歯科診療とは
そもそも訪問歯科診療とはどういったものなのでしょうか?
歯医者さんがない病院に入院している方、施設や自宅で療養している方など、介護を必要とする高齢の方がクリニックへ通院するのは難しいものです。
訪問歯科診療とはそういった場合に対応でき、歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設などに出向き歯科診療を行うものです。
ある調査によれば、要介護認定者数は2014年時点で600万人を超えているそうです。
このような状況で歯周病や虫歯、入れ歯の使用などは介護が必要な高齢者にとって健康を維持するためにも必要不可欠であり、訪問歯科の必要性が高まってきています。
訪問歯科が受けられる人
では訪問歯科診療が受けられる人とは具体的にどういった人なのでしょうか。訪問歯科診療を保険を使い受けるためにはいくつかの条件があります。
まず、お近くの歯科医院へ通院ができない正当な理由がある人と決まっています。
具体的に言うと、高齢で介護が必要な方や体が不自由で通院が困難な方などが対象で、通院するのが面倒だったり、通う暇がないなどの理由では利用することはできません。
さらに、訪問してもらう歯科医院から半径16キロ圏内に施設や自宅があることが条件になります。
訪問歯科診療の申し込みをされる場合にはこれらを満たしているかどうかを確認した上で申し込むようにしましょう。
訪問歯科診療を依頼するには
訪問歯科診療を行っている歯科医院は現在そう多くはありません。
ご近所の歯科医院に聞いてみても断られてしまうこともあります。
自宅に来てもらいたい場合には担当のケアマネージャーや地域包括支援センターなどで聞いてみるといいかもしれません。
また、施設に来てもらいたい場合はその施設の方に聞いてみるといいでしょう。
訪問歯科医院と連携している場合があったり、他の方が利用した歯科医院を紹介してくれることがあります。
訪問歯科診療の必要性
誤嚥性肺炎を防止できる
お口の中の細菌が気管に誤って肺ってしまい発症する病気を誤嚥性肺炎と呼んでいます。
気管に異物が入ってしまうと反射的に咳をすることで吐き出そうとしますが、高齢者や認知症の方はその反応が弱いため吐き出すことができません。そうなると、気管や肺に入ったままの異物によって肺炎が起きます。
お口の中の細菌を減らすことが誤嚥性肺炎の防止に繋がります。
お口の機能の低下を予防したり改善できる
お口の機能が低下してしまうと、ものをしっかりと噛めなくなるため摂食障害や嚥下障害を起こすことがあります。
そうなると、十分に栄養を摂ることができなくなり体力や免疫力が低下することもあります。
さらに、食事をしっかりと噛んで摂ることで脳に刺激が伝わり、認知症を予防する効果があると言われています。
歯周病を予防できる
お口の中の健康を考えた時に最も予防したい病気は歯周病でしょう。
歯周病とは歯を支える歯ぐきや骨が歯周病菌によって壊されてしまう病気のことで、最悪歯が抜け落ちてしまう場合があります。
また、歯周病菌によって全身に悪影響が及ぶ場合もあります。
誤嚥性肺炎の他に脳卒中や動脈硬化、心筋梗塞や狭心症などの原因になることもあるそうで、糖尿病の方は血糖値が高くなり歯周病になりやすいそうです。
そのいっぽうで、歯周病の方は糖尿病が進行しやすいことも分かってきています。
訪問歯科のメリット
訪問歯科の最大のメリットは通院しなくても治療が受けられることでしょう。
介護を必要な人はもちろんですが、介護をする側の方にとっても歯科へ行くための肉体的、精神的負担が軽くなり、時間的にも節約できます。
さらに、歯科医師や歯科衛生士さんなどによるプロの指導が受けられるので、お口の中を常に健康に保てるようになります。
また、生活している場所で診療が受けられるので、患者さんの日ごろの生活に応じた指導が受けられるのもメリットでしょう。
歯科医師や歯科衛生士が患者さんの生活や嗜好、家族関係などを把握した上で最適な診療内容を提案できます。
訪問歯科診療を受診する際に必要なもの
訪問歯科診療を利用する際に必要なものは特に何もありません。
ただ、用意しておくといいものはあります。
それはコップやタオルなどですね。
スタッフが用意したものより、日ごろ使い慣れているものを使った方が患者さんが落ち着いて診療を受けられるからです。
ただ、絶対に用意しておく必要があるわけではないので安心しましょう。
訪問歯科診療を受診する際に必要なスペース
施設か個人の家かによっても違いますが、洗面所はたいてい狭いので他のスペースが望ましいです。
患者さん本人が落ち着いて診療を受けられる場所でコンセントがあるところがいいでしょう。
広いスペースが必要というわけではなく、患者さんが座るスペースとスタッフが動けるだけのスペースがあればいいと言われています。
まとめ
介護が必要な高齢者や体が不自由な方の歯科治療やお口のケアは緊急性のないものがほとんどなので軽く見られがちです。
ですが、歯科治療やお口のケアを行うことで誤嚥性肺炎を予防できたり、栄養状態がよくなったりなどメリットが多いです。
最近では医療や介護の現場で歯科治療やお口のケアが高く評価されるようになってきました。ここでご紹介したことが訪問歯科を利用してみたいなと思っている方のお役に立てると幸いです。